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脳出血の治療としては原則として血圧のコントロールや抗脳浮腫薬の点滴などの内科的治療が主体となります。症状も点滴のみで安定する場合がほとんどです。
しかしながら、脳出血の予後は出血の量により大きく左右されます。
出血の量が多く、生命に危険が及んでいると判断した場合には、救命のために開頭術で出血を取り除き、出血原因となった血管を止血する必要があります。
また、手術は行わなくても手足を打撲した時の皮下出血と同様に、出血はやがて吸収され、無くなります。
ただし、脳出血の場合には吸収が遅いため、リハビリテーションが思うように進まない場合があります。
その場合にも開頭術や内視鏡手術などにより血腫を取り除くことで、早期からどんどんリハビリテーションに励んでいただける環境を作っています。
脳出血の生存者の半数近くが要介助もしくは寝たきりとなっていることからも、脳出血の予後が良いとは決して言えません。出血で破壊されてしまった脳がもとに戻ることは手術を行ってもあり得ないことです。
そこで、できるだけ早い時期からリハビリテーションを開始することが肝要です。
そのために、当館では少しでも患者さんの負担が少なく、手術後もすぐにリハビリテーションを開始できる内視鏡下血腫除去術を脳出血の患者さんの第一選択として、おすすめしています。
当館には、神経内視鏡技術認定医2名が常勤しており、緊急時にも対応可能です。
脳室という脳脊髄液を作り出してためておく脳の部屋に出血することがあります。脳室の中の出血でなくとも、その周辺から出血した時に脳室の中に流れ込むこともあります。
脳室内血腫の予後はよくないといわれています。
血腫により脳幹、視床下部などが障害を受けることが原因と考えられますし、水頭症を併発することも多いため、脳室ドレナージ術を行って、脳脊髄液や血腫を排出することが一般的です。
当館ではより積極的に内視鏡を用いて、血腫を取り除く手術も行っています。
内視鏡手術も全例全身麻酔で行っています。
内視鏡下血腫除去術では、出血の部位によって異なりますが、下図のように4cmほどの皮膚を切開して、頭蓋骨に小さな穴をあけ、そこから内視鏡と出血を取り除くための吸引管を入れるための透明なチューブ型のシースを出血部まで挿入します。
そこから出血を取り除き、出血の原因となった切れた血管を見つけて止血します。
切開を行う場所は出血した部位にできるだけ近い場所や止血を行いやすい場所など、その患者さんごとに計測して決定しています。
頭髪の薄い患者さんで、額に切開を行った場合でも額のしわに沿わせることで、できるだけ目立たないようにしています。
下図(左)は、術後2日の額の写真です。額の右側に切開があるのがわかります。
下図(右)は、術後10日の同じ患者さんの額の写真です。よく見ればうっすらとすじがあるのがわかるくらいになります。
チューブのなかで出血を取り除いて、出血血管を見つけだし、止血を行います。
平成25年から内視鏡手術を第一選択としていますが、手術にかかった時間を導入直前の開頭手術10例と導入後の内視鏡手術10例で比較してみると、手術にかかる時間も劇的に短くなっているのがわかります。
手術時間が短いことも患者さんの負担の軽減につながっています。
開頭術(n=10) | 内視鏡手術(n=10) |
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198.6(169〜243)分 | 55(36〜73)分 |
脳神経外科医長 吉岡史隆