トップページ > 来館される皆さまへ > 好生館コラム > 好生館コラム一覧 > 第48回 脳卒中診療は個から組織へ
脳卒中という病気は脳の血管が詰まったり破れたりして起こる病気ですが、症状は神経そのものの障害に由来します。結果だけを見れば神経の病気ですが、原因をよくよく見れば血管の病気ですから、どちらにも目配りしておかないと良い治療にはなりえません。
それに血管は全身にありますから、脳の血管だけが悪くてほかの血管は大丈夫、などということは虫がいい話であることがおわかりでしょう。加えて脳は血液が足りないことにとても弱い臓器で治療が遅れたら取り返しがつきません。脳卒中診療は全身を診る総合的な視点とスピード感とが大事なのです。
さて、佐賀県医療センター好生館では今年度から脳血管内科を新設し、脳卒中センターが稼働開始しました。何となく新しいビルか何かができたような印象ですが、実際には昨年5月に移転オープンしたばかりの新病院に新たな施設が追加されたわけではありません。むしろ新病院は大変立派な施設を備えていましたが、それらを生かすのに十分なマンパワーがありませんでした。脳神経外科、脳神経内科に加えて脳卒中に特化した診療科である脳血管内科も加わることで充実した設備を存分に、かついつでも活用できるようになりました。
超急性期からの治療や管理についてこれらの科が毎週二回のカンファレンスを含めてことあるごとに一人一人の患者さんについて話し合って最良の方策を模索しています。さらに言えばヘリコプターを使い救命救急センターを経由して全県どこからでも10数分で患者さんを受け入れられます。超急性期であっても放射線科の協力で特殊な画像診断検査でも迅速に施行できます。リハビリテーション科のおかげで早期からの積極的なリハビリが可能です。いわばオール好生館体制で患者さんを診ていくわけです。もちろん予防も大事ですので脳卒中の危険の高そうな動脈硬化が進んだ患者さんの管理についてご相談を受ければ、最善の手段を一緒に検討いたします。「神の手」でもワンマンプレイでも偉い先生の鶴の一声でもなく、専門医集団が力を合わせて組織的に診るのです。充実した施設やスタッフを誇る病院はいくつもありますが、多くは単一の突出した診療科に頼り、当院のように多部署が有機的に連携協力しながら診療しようというところはなかなかないと思います。
回診
脳卒中センターは箱物でも診療科でもありません。脳卒中という病気を多方面から治療し、患者さんを中心にして支える組織的診療体制そのものであり、それこそが私たちが目指しているものなのです。
そうは言ってもまだまだ立ち上がったばかりですから地域内の連携も含めて課題はあります。少しずつ解決していき佐賀県の脳卒中診療のレベルアップと地域住民の方の健康寿命を延ばしていくよう努めて参ります。
好生館は主に専門的な医療や救急医療を担当する病院です。症状が安定しましたら、お近くの「かかりつけ医」をご紹介いたします。(その後は「かかりつけ医」と相談のうえ、必要に応じて当館を受診していただくことになります。)
皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
好生館は、地域の「かかりつけ医」の先生方と連携して、患者さんへのより温かい充実した地域医療の提供に努めてまいります。