診療科案内
腎臓内科
診療内容
内科的腎疾患に対する精査加療(経皮的腎生検、ステロイドパルス療法等)
①経皮的腎生検:
慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急速進行性糸球体腎炎などが疑われる場合、経皮的に腎組織を採取し顕微鏡で精査します。この検査によって、確定診断、正しい治療法の選択、腎予後の予測が可能となります。
②ステロイド治療、ステロイドパルス療法:
副腎皮質ステロイドには強い抗炎症作用があり、腎炎・ネフローゼ症候群を来す一次性糸球体疾患では、薬物治療の第一選択薬として広く用いられています。中でも、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、IgA腎症、急速進行性糸球体腎炎ではそれぞれに治療ガイドラインが作成されており、これらを基に、腎生検組織所見や患者さんの全身状態なども加味して、ステロイドの種類や使用量を選択します。
疾患や病状によっては、高用量のステロイドを短期間使用するステロイドパルス療法を行っています。
③免疫抑制剤:
免疫抑制剤は、副腎皮質ステロイドとともに、腎炎、特に急速進行性糸球体腎炎を呈する抗好中球細胞質抗体関連腎炎・血管炎やネフローゼ症候群、膠原病による腎病変の治療に用います。
主な薬剤;シクロスポリン、ミゾリビン、シクロフォスファミド、リツキシマブ、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、アザチオプリン等
④扁桃摘出+ステロイドパルス療法:
慢性糸球体腎炎の一つであるIgA腎症の発症原因として、扁桃腺を含む口腔内感染によって異常なIgAが産生されることが考えられており、その原因を除去するための治療法です。扁桃摘出術後にステロイドパルス療法を行うことで、すでに血中に存在する異常IgAや腎臓に沈着しているIgAを抑えるとともに、糸球体で起きている炎症も抑制する効果があると考えられています。扁桃摘出術は当館の耳鼻咽喉科で施行しています。
腎不全教育入院を主としたCKD診療
①食事療法:適切な水分、カロリー摂取、塩分・蛋白・カリウム制限等
腎機能障害が進行すると、蛋白質や塩分の過剰摂取は腎臓に負担をかけてしまいます。腎機能障害の程度によって、カロリー、水分、蛋白質、塩分、カリウム等の適切な摂取量を調整し、弱っている腎臓を保護します。
②生活指導:
喫煙や生活習慣病(糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症 等)は、腎機能低下に拍車をかけるため、適切な飲水指導・体重測定・血圧測定・禁煙が大切です。
生活習慣の是正のみで改善しない場合は、薬物療法も重要となります。
③薬物療法:
【降圧薬】
腎不全では尿量の減少による体液量の増加や動脈硬化の進行により、高血圧の頻度が高くなります。適切な塩分制限や飲水制限を行っても血圧が高い場合は、降圧剤や利尿剤を内服し、適切な血圧を維持することで生命予後を左右する循環器系合併症を予防します。
【エリスロポエチン製剤(皮下注射)】
腎不全では腎臓で産生されるエリスロポエチンという赤血球造血ホルモンが減少するため高度な貧血(腎性貧血)を来します。そのため、エリスロポエチン製剤を投与し造血を促します。
【生活習慣病(糖尿病、高尿酸血症、脂質異常症 等)の治療】
生活習慣の是正のみで改善しない場合は、薬物療法が必要となります。
透析療法(血液透析、腹膜透析)の導入、維持、合併症治療
腎代替療法は、食事療法や薬物療法でも腎不全症状が改善せず悪化していく場合に適応となります。
本邦で可能な腎代替療法は、腎移植、血液透析、腹膜透析で、腎臓内科では主に血液透析と腹膜透析を行っています。
腎移植・血液透析・腹膜透析にはそれぞれ利点と欠点があります。これらを十分患者さん本人やご家族に理解していただき、的確な選択を行った上で治療に取り掛かることが重要と考えております。
【血液透析】
血液を体外にポンプで導き出し、ダイアライザー(人工腎臓)を通して毒素や水分、ナトリウムやカリウムなどのミネラルを除去、調整する治療です。週3回病院に受診し、4~5時間の治療を受けます。日常生活に支障のないレベルでの血液検査のデータを維持するもので、正常の腎臓と同等の状態にはなりません。従って、日常の食事制限や水分制限が治療を受けるうえでとても大切になります。血液を体外に導き出すために、ブラッドアクセスというものが必要です。通常は利き腕と反対の前腕で動脈と静脈を繋いで内シャント血管を作成します。
【腹膜透析】
血液透析で使われる人工腎臓の代わりに自分のおなかの中の腹膜を利用して行う透析です。おなかの中に透析用のチューブを挿入し、1回1.5L~2Lの透析液を注入すると、体内からその透析液の中に毒素や余分な水分、ミネラル等が出てきます。この透析液を自分で出し入れすることで、腹膜透析を行っていきます。
カテーテルの管理、透析液の交換等は自分で行う必要があります。この治療も血液透析と同様に日常生活に支障のないレベルでの血液検査のデータを維持するもので、正常の腎臓と同等の状態にはなりません。
連続持続携行式腹膜透析(CAPD:Continuous ambulatory peritoneal dialysis )と呼ばれる治療は、この透析液を1日4~5回交換することで、24時間連続して透析を行う方法です。そのため、体への負担が少なく、食事制限も血液透析に比べ幾分軽いという特徴があります。
透析液の交換は清潔に行うことが必須です。自宅、勤務先などの清潔な場所で、手洗いを十分に行い、決められた手順を守ることが重要です。
自動腹膜透析(APD:Automated peritoneal dialysis)と呼ばれる治療は、自動腹膜透析装置を用いて透析液交換を行う方法です。1日1回、夜寝ている間にサイクラーという自動腹膜透析装置が自動的に透析液の交換を行います。
各種血液浄化療法(血漿交換、LDL吸着、白血球除去や顆粒球除去等の特殊血液浄化等)
【血漿交換】
病因物質を選択的に除去し、必要な血漿を補う治療法で、血液中の血漿だけを交換することから血漿交換法と呼ばれます。
単純血漿交換:
体内より取り出した全血を血漿分離器によって血球成分(赤血球、白血球、血小板)と血漿成分とに分離し、分離された病因物質を含む血漿をすべて廃棄することによって病因物質を除去し、失った血漿成分を血液製剤やアルブミン製剤などの代用の補充液で当量置換する治療法です。肝臓が機能しなくなったときなど、除きたい成分が多数ある場合や、血中の成分を除く方法がほかに見つからない場合にも用いられます。
二重濾過血漿分離交換:
単純血漿交換から派生して誕生した治療法です。細孔径の異なる血漿分離膜を用いて血漿の濾過を2段階で行い、病因物質を含む分画のみを除去します。単純血漿交換に比べ、置換液の量が少量ですむという利点があります。
LDL吸着:
コレステロール塞栓症は、動脈硬化性プラークの破綻によってコレステロール結晶が血液中に飛散し、末梢小動脈を塞栓し、他臓器に重篤な障害を生じる疾患です。その中でも血管内操作や血管外科的手術が誘発因子となり、腎機能障害を呈した患者さんを対象としてLDLコレステロールを選択的に吸着する治療をLDL吸着療法と言います。リポソーバーLA-15という吸着膜を用いた血液浄化療法と薬物治療の併用により、腎機能の改善を目指す治療で、本邦の先進医療として認められています。
腹水濾過濃縮再静注法
腹水濾過濃縮再静注法(cell-free and concentrated acites re-infusion therapy:CART)は難治性腹水に対する治療で、腹水中の有用な物質を体内へ保持するため、腹水を再静注可能な形態に調整する方法です。
採取された腹水(2~3L)を無菌的に濾過・濃縮し、静注で体内に戻します。
腹水を除去することによる効果とアルブミンをはじめとする腹水中の蛋白質が再静注されることによる効果が期待できます。