診療科案内
脳神経外科
診療内容
脳血管疾患(脳卒中)
くも膜下出血(破裂脳動脈瘤)
突然の頭痛や嘔吐、意識障害などの症状で急激に発症する致死率の高い疾患です。多くの場合、脳動脈瘤の破裂が原因で発症します。元通りに元気に回復する患者さんは5人に1人程度と、重篤な疾患ですが、適切な外科治療と術後管理によってより多くの患者さんが回復するよう努力をしています。当院では、脳動脈瘤の部位や形状、患者さんの年齢や全身状態といった様々な要因を考慮して、開頭クリッピング手術、脳血管内手術の選択をしています。手術後は、救命センターや脳卒中ケアユニットで脳血管攣縮*に対する厳重な管理を行います。また、くも膜下出血後の水頭症に対してはシャント手術を適切なタイミングで行います。
*脳血管攣縮:くも膜下出血の合併症として、脳の血管が攣縮(縮むこと)を生じ、血流不全を引き起こします。程度が強い場合には脳梗塞を生じて死亡することもあります。発症後の約2週間は脳血管攣縮を起こしやすい時期で、厳重な管理が必要です。
未破裂脳動脈瘤
脳ドックなどで見つかることの多い未破裂脳動脈瘤は、くも膜下出血の原因となります。ただし、すべての脳動脈瘤が破裂しやすいわけではありませんので、動脈瘤の大きさや部位、形状、患者さんの年齢や状態によって、治療を行うべきか、経過観察を選択すべきか判断します。くも膜下出血の場合と同様に、症例に応じて開頭クリッピング術と血管内手術を選択しています。
脳出血
脳出血(高血圧性脳内出血)の治療は、保存的治療といって、降圧剤や止血剤の投与で経過を見つつ、早期にリハビリテーションを開始するのが基本です。しかし、脳内血腫が大きく、生命の危険がある場合や脳の圧迫が強い場合には外科手術で血腫を取り除く治療を行います。当院では、小開頭による内視鏡下血腫除去術や、従来からの開頭血腫除去術などを行っています。
脳血行再建術
脳神経外科では脳梗塞の発症予防や再発予防を目的とした血行再建術を行っています。動脈硬化による脳動脈閉塞症やもやもや病に対しては、バイパス術を行います。
頚動脈狭窄症に対しては、頚動脈内膜剥離術や頚動脈ステント留置術を行います。治療法は、頚動脈プラークの性状を重視し、病変の位置や患者さんの全身状態を加味して選択します。
頭部外傷
救急部とともに365日体制で重傷頭部外傷の診療に当たっています。また、多発外傷に関しては整形外科、外科、救急科とともに外傷チームとして診療しています。緊急血腫除去手術や脳低温療法を行っています。また、重傷頭部外傷後に起こる高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害)の評価や後遺症認定などにも力を注いでいます。
脳腫瘍
髄膜腫
最も頻度の高い脳腫瘍の一つです。多くは良性でゆっくりとした発育を示します。脳を圧迫することで、神経の症状や痙攣の発作などを引き起こします。無症状の小さな腫瘍の場合には経過観察を選択することもあります。治療は手術で全摘出するのが最も効果的です。腫瘍の発生する部位によって手術の難易度が大きく変わります。深部の腫瘍で比較的小さい場合にはガンマナイフなどの放射線治療が効果的な場合もあります。
神経膠腫
グリオーマとも呼ばれます。脳実質に発生する悪性腫瘍で、摘出した腫瘍の病理診断や遺伝子診断によって種類や悪性度を診断します。病理診断(遺伝子診断)の結果に応じて、抗がん剤や放射線治療などの後療法を選択します。
下垂体腺腫
脳下垂体から発生する腫瘍でほとんどは良性の腫瘍です。下垂体ホルモン(成長ホルモンやプロラクチンなど)を分泌するタイプの機能性下垂体腺腫とホルモンを分泌しない非機能性下垂体腺腫に分けられます。前者は先端巨大症(成長ホルモン)や乳汁分泌・無月経(プロラクチン)などホルモン過剰による症状を引き起こします。先端巨大症では手術が第一選択の治療法で、手術でコントロールができない場合に薬物療法や放射線治療など集学的治療を行います。プロラクチン産生下垂体腺腫の場合は薬物療法が効果的な場合が多く、薬物療法を第一に考えます。非機能性下垂体腺腫の場合には、近傍の視神経を圧迫することで視力低下や視野狭窄など視神経障害を引き起こします。手術による摘出が第一選択です。下垂体腫瘍の手術は、鼻腔を経由して頭蓋骨の底の方から脳を触らずに摘出を行います(経鼻的下垂体腫瘍摘出術)。
転移性脳腫瘍
がんなどの悪性腫瘍が脳に転移して生じます。大きな腫瘍の場合には手術で摘出します。小さい腫瘍や多発する腫瘍の場合には放射線治療を適用します。どのような治療を選択するかは、腫瘍の状態やがんの進行状態などを考慮した総合的な判断を必要とします。
特発性正常圧水頭症
特発性正常圧水頭症とは原因が特定できず、脳室の拡大が見られ、歩行障害、認知症、尿失禁の症状が進行する病気です。的確に診断できれば、髄液シャント手術で症状の改善を得ることができます。2004年にガイドラインが制定されて以来当科でも積極的に治療を行っており、良い成績を収めています。高齢化社会の到来とともに当館での手術症例も増加傾向にあります。