ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ

診療科案内

呼吸器外科

診療内容

原発性肺癌

肺にできる癌のうち、肺および気管支の細胞から発生する癌を、「原発性肺癌」といいます。一方、大腸癌のような体の他の部位に発生した癌が肺に飛んできたものを、「転移性肺癌」といいます。これらの2つの癌は治療方針が異なります。

手術適応に関して

原発性肺癌の手術適応は、癌の組織型、病期(進み具合)、耐術能(手術に耐えれることが可能かどうか)によって決定されます。患者さん個々にこれらの要素を検討し最終的に手術適応を決定します。原発性肺癌の手術適応に関する一般的な考え方は「肺癌診療ガイドライン(日本肺癌学会編)」に記載されています。

組織型について

原発性肺癌の組織型は、大きく分けて小細胞肺癌と、非小細胞肺癌に分かれます。このうち非小細胞肺癌は、さらに扁平上皮癌、腺癌などの各組織型に分かれます。

病期について

ステージングとも言います。病期(ステージング)とは癌の「進み具合」のことです。「進み具合」は「大きさ」、「浸潤」、「転移」によってIa期からIV期に細かく分けられています。一般的に手術適応となるのは非小細胞肺癌のI期とII期、およびIII期の一部の患者さんです。正確なステージングは、「肺癌取り扱い規約第7版(日本肺癌学会編)」によって細かく記載されています。

転移性肺腫瘍

肺には大腸癌のような他の臓器で発生した癌が肺に飛んできます。肺に飛んできたものを「転移性肺腫瘍」または「転移性肺癌」といいます。肺に転移する癌としては、結腸・直腸癌(大腸癌)、乳癌、腎癌、子宮癌、骨・軟部腫瘍、膀胱癌などの様々ながんが肺に転移します。転移性肺腫瘍の手術の適応は、原発巣の癌の性格や肺転移の個数・部位によってもかわりますが、昔よりThomfordの基準(表1)が用いられてきました。最近では両側であっても適応になることがあります。また原発巣の癌の種類によっては、初回手術から転移・再発出現までの期間の長さや、転移巣が出現してから数カ月以上経過しても新な病変が出現しないなどの条件が必要な場合もあります。術式は部分切除を行うことが多いですが、転移巣が肺の深い部分にある場合は個々の患者さんの状態によっては区域切除や肺葉切除が必要になる場合があります。

表1:Thomfordの基準(1965)
  1. 患者が手術に耐えられること
  2. 原発巣がコントロールされていること
  3. 肺以外に再発・転移が無いこと
  4. 転移巣が一側肺に限局していること

縦隔腫瘍

縦隔(じゅうかく)とは左右の肺の間に隔てられた部分を指します。この縦隔に発生した腫瘍のことを総称して縦隔腫瘍といいます。ただし食道、気管、気管支、心臓および大血管から発生した腫瘍は除外されます。縦隔腫瘍の代表的なものとして胸腺腫、胸腺がん、奇形腫、胚細胞性腫瘍、気管支原性のう胞、食道のう胞、リンパ腫、神経原性腫瘍などがあります。
縦隔は解剖学的に診断をつけるのが難しく、手術で切除するまで良性か悪性なのか判明しないことがよくあります。しかし良性であっても増大することによって周囲臓器を圧迫しさまざまな症状が出現します。そのため治療は腫瘍の種類と病変の大きさや拡がりによっても違いますが、良性か悪性にかかわらず手術が可能であれば一般的には手術療法が選択されます。手術の方法は、胸の前方の骨である胸骨を縦に切開する胸骨正中切開や左右の肋骨の間を切開する肋間開胸をして腫瘍を切除します。最近では腫瘍が早期で小さい場合は内視鏡手術を行うこともあります。

気胸

気胸とはなんらかの原因で肺に穴が開きそこから肺の外側の胸腔内に空気が漏れ、肺がしぼんだ状態をいいます。気胸には肺の基礎疾患のない人が特に原因なく起こる原発性自然気胸(自然気胸)と肺の基礎疾患がある人に起こる続発性自然気胸(続発性気胸)があります。

原発性自然気胸(自然気胸)

若く痩せた男性に好発します。肺の一部が脆弱なブラと呼ばれる袋状になり、これが明らかな理由もなく破れることによって発症します。一旦治っても、多くの人(最大で50%)に再発がみられます。

続発性自然気胸(続発性気胸)

基礎疾患として慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある患者さんのブラが破れときに発生することが最も多いと言われていますが、その他の基礎疾患として間質性肺炎、喘息、肺感染症や肺がんなどの患者さんでも起こります。また、女性特有の特殊な続発性気胸として月経随伴性気胸があります。月経随伴性気胸は胸腔に発生した子宮内膜が原因で起こる気胸と言われています。

気胸の治療

程度の軽い気胸であれば特に治療せず治ります。呼吸に支障をきたす気胸の場合は胸腔内に漏れ出た空気を抜くために胸腔内にドレーンという管を入れ治療します。
再発気胸が手術適応ですが、気胸の原因となる袋状のブラが認められる場合は初発であっても手術の適応になることがあります。手術の目的は気胸の再発を予防することです。手術は小さな傷で胸腔鏡を使用する胸腔鏡手術で行うことがほとんどで気胸の原因となる病変を含めて肺を部分切除します。続発性気胸の場合は開胸手術で行う頻度が増加します。

膿胸

胸腔内に膿が貯留した状態を膿胸といいます。罹患期間が3ヶ月以内を急性膿胸、3ヶ月以上を慢性膿胸といいます。膿の排出する管を挿入するドレナージと抗生剤投与が治療の基本です。
急性膿胸は、早急にドレナージと抗生剤投与を行うことが大切です。治療の開始が遅れることで膿胸腔にフィブリンによる隔壁が形成された場合、十分なドレナージ効果が得られなくなります。この様な場合に膿胸腔の隔壁を掻破一腔化し、適切な位置にドレーンを留置する目的として手術を行うことがあります。当科では、胸腔鏡を使用した胸腔鏡下掻爬術を行っています。一方、慢性膿胸は、肺結核や真菌などによるものが多く、難治性です。手術は開窓術や胸郭形成、大網や筋弁を用いた充填術が必要となります。

中枢気道狭窄

腫瘍や外傷、結核などの後遺症で中枢気道狭窄を起こし、呼吸困難となることがあります。その場合硬性気管支鏡や軟性気管支鏡を用いて、レーザーなどで焼灼し、狭窄部を解除する治療を行います。その後、必要に応じてシリコン製や金属製のステントと呼ばれる器具を留置し、気道を確保する治療を行います。


シリコンステント